本誌でも何度か紹介されているこのコンクール、その歴史は1963年第4回「上海之春 国際音楽祭」二胡比賽(コンクール)まで遡ります。1960年以来動乱(文化大革命)の時代を除いてほぼ毎年5月ごろ上海で開催されている「上海之春 国際音楽祭」という音楽月間があります。その第4回の行事の一環として開催されたのが一回目の「上海之春」二胡コンクールです。中国史上初めての二胡全国大会と言われており、公正公平を重視した権威あるコンクールとして閔恵芬、蒋巽風、王国潼、蕭白繧ネど、現在の二胡界重鎮達が新人として受賞しました。また二胡の名作として現在でも頻繁に演奏される「賽馬」「江河水」「三門峡暢想曲」「秦腔主題随想曲」「豫北叙事曲」等が新作品として発表されました。同時にこれらの作品を作曲した劉文金、魯日融等は新人作曲家として一躍有名になりました。共に現在の二胡作品の作曲を牽引する大家です。この歴史に残るコンクールの様子は「上海之春-1963年第一届全国二胡比賽作品選-」というタイトルで龍音レコードより出版されています(『二胡之友』オフィシャルサイト内のショップで取り扱い中)。
二回目は28年後の1991年に第14回「上海之春国際音楽祭」二胡コンクール(敦煌杯)として開催されました。王莉莉、陳春園、段 が受賞し、いずれも現在では教育家や演奏家となって有名音楽学院や楽団の中核を担っています。また新作品として「葡萄熟了」(周維作曲)が発表されました。
三回目は更に17年の時を経て2008年に開催されました。陳暁棟、張重雪、張昭等が受賞。また朱暁谷作曲「導板与流水」及び高韶青作曲「蒙風」の新曲2曲が指定課題曲として発表されました。特に「蒙風」は民族的なメロディーと現代的なリズムが融合した傑作として瞬く間に世界中で演奏されるようになりました。※
そして四回目は2012年「上海之春国際音楽祭」組織委員会主催で第29回・同音楽祭期間中の5月10日から12日まで、3日間にわたって開催されたのです。二胡界をリードし、権威ある、公正なコンクールであることを掲げて開催された今回は、優秀な二胡奏者の発掘と、中国民族音楽の伝承と発展を促すことを目的にし、運営は上海音楽家協会、また、上海音楽学院民族器楽部、賀緑汀音楽ホールが協力団体に名を連ねています。※(高韶青のCD「蒙風」は『二胡之友』オフィシャルサイト内のショップで取り扱い中)