第54回 チェンミンさんの各種二胡

 今年も残すところあと僅かじゃのう、ご存知アルフー老師じゃよ。昨年からずっと、コロナ禍に翻弄され続けて来たが、数年後に振り返った時、我々は果たして何を思うのじゃろうか…。パンデミックの影響で世界的な半導体チップ不足が続き、特に自動車産業への影響が深刻じゃが、楽器の世界においては電子ピアノやエフェクターなどの電子機器の納期が軒並み後ろ倒しになっとるそうじゃ。材料に与える影響も少なくないため、二胡なども安心はできぬが、関係者によると、まだ安定供給されておるということじゃったよ。巣籠り需要もあり、ギターやウクレレなどのアコースティック楽器の販売が好調じゃが、ずっと音色に惹かれて気になっていた二胡を、この機会に始めてみたいという人も後を絶たないそうじゃよ。なんとも勇気をもらえるような明るい話題で爺も嬉しいよ(泣)。
 さて、感染拡大も少し落ち着いたところで、二胡界の重要人物が名器を所有するという噂を聞き付けたため、キン斗雲の舳先を東へと向け、目的地へと急いだのじゃ〜!!今回降り立ったのは、世界有数の繁華街・商業地区を有する東京都新宿区。この街を拠点として活動し、名器を所有しておったのは、日本二胡界の先駆者でもある演奏家のチェンミンさんじゃ!自身の音楽事務所兼レッスン教室「チェンミン音楽園(おとらくえん)」のチャイムを緊張しながら鳴らすと、スラっと端麗な印象のチェンミンさんが優しく出迎えてくれ、愛用の楽器について丁寧且つ細やかに説明してくれたんじゃ〜!!
 チェンミンさんは中国蘇州の生まれで、上海戯曲学校を卒業後、上海越劇院楽団の首席を務め、1991年に来日、 1997年には共立女子大学を卒業。その後の活躍は目覚ましく、2001年にアルバム『I Wish -我願-』で脚光を浴びると、日本の二胡ブームの火付け役になり、2003年には「第17回日本ゴールドディスク大賞」特別賞を受賞。活動は幅広く、ジャンルを超えたトップ・アーティストたちとのコラボレーションにも積極的に取り組み、演奏活動に加え、TV番組、映画、舞台音楽のテーマ曲などの演奏、作曲を手掛けて来たぞ。代表的な演奏作品はNHK『スポーツ大陸』エンディングテーマ、大河ドラマ『風林火山』、『江〜姫たちの戦国〜』の紀行のテーマ、『いだてん〜東京オリムピック噺(ばなし)〜』、B’z松本孝弘氏との共演『氷艶〜月光かりの如く〜』等のテーマ曲、ニュース番組『まるごと山梨』(作曲・演奏)、映画音楽『たそがれ清兵衛』、『春の惑い』、『スーパー歌舞伎U空ヲ刻ム者』の劇中曲など、紹介し出したらキリがないくらいじゃ。
 さて、チェンミンさんともなると、既に各方面でヒストリーは紹介されておるじゃろうから、ご本人さんのたっての希望もあり、今回は特別版として現時点での愛用楽器をできる限り多くご紹介してゆくとしよう。まずはチェンミンさんがさまざまな現場で最も多用しておる「胡涵柔精製 インド小葉紫檀二胡」から。

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