11月号から始めた「光明行」のアナリーゼ、いよいよ中盤に差し掛かってきました。この曲のA+B+A+コーダという構成から言うと、今回は中間部のBの部分(【三】と【四】)に入ります。一般に中間部というのはなかなかチャレンジングな部分で、起承転結に当てはめると、「転」の部分になります。作曲家はここでいろいろ趣向を凝らしますから、聴く立場、或は演奏する立場の人はおちおちしていられません。また、同様な構成であればどの曲でも、中間部からAの部分に戻るところが一つの聴き所と言えるでしょう。中間部でいろいろな事が起きてスリルを味わった後で得られる「始めの主題に戻った!」という安堵感は、旅路の果てにようやく我が家にたどり着いたのと同じで、時間芸術である音楽ならではの醍醐味なのです。そして、音楽の構成についてのお約束事を知る事は、この醍醐味を味わうための前提条件でもあります。劉天華は、「光明行」の中間部においてどのような趣向をこらしたのでしょう。それは作曲者の思惑通りに成功したのか、すべってしまったのか、これから詳しく見て参りましょう。
- 第三段 第69小節から第112小節
- 第四段 第113小節から第148小節