第21回 段琳先生の紫檀二胡

 新年好! ご存知アルフー老師じゃ。この号が皆の手元に渡る頃にはめでたく新しい年が明けておるじゃろうのぅ。それにしても今年の冬はいつもにも増して寒さが厳しく、爺の老体には染みるが(泣)、皆は風邪などひかぬように気をつけるんじゃぞ。さて、前回は名古屋駅からほど近い場所を拠点に、精力的に活動しておるキュートな二胡奏者のもとを訪ねたが、今回は、同じく名古屋市内に名器を所有した二胡奏者がおるとの情報を仕入れたため、中部地区に留まることにしたぞ! 今回、キン斗雲には暫く休憩してもらい、目的地までは地下鉄で移動したよ(笑)。辿り着いた場所は、多くの行政機関や商業施設が集まっておる、名古屋市の中核に位置する中区じゃ。名器を所有しておるのは、この街を拠点に演奏活動と並行して教室を開講している段琳さんという、二胡演奏家、講師の女性とのことじゃった。お会いしてみると、とても線が細くて美しく、ステージ上でもより映える二胡奏者という印象じゃったぞ。おまけに気配りが行き届き、爺の突然の訪問にも関わらず、愛用の楽器について一つ一つ丁寧に説明してくれたぞぉ〜い(泣)
 段さんの故郷は中国四川省で、中国最難関の北京中央音楽学院出身ということじゃ。卒業後は北京の王府井で琵琶やピアノ・唄と合わせた演奏活動をしていたが、2009年に来日、2012年より名古屋で本格的に演奏活動を始めたということじゃった。現在はアーティスト活動のほかに、講師レベルの方も教える指導者としての活動も軌道に乗り始めているそうじゃよ。そんな段さんが演奏活動やレッスンにおいて使用しておる楽器は、「北京長安楽器 張鈞」氏製作の北京式アフリカ小葉紫檀二胡ということじゃった。それでは早速、本人のコメントを交えて紹介させてもらうことにしよう。

北京長安楽器“宋飛”シグネチャー アフリカ小葉紫檀二胡全体

段琳先生:私は音楽一家に生まれ、幼い頃に父と姉の影響で二胡を始めました。最初に手にした楽器は、まだ時代的に紫檀などは手に入りづらかったため、初心者用の紅木二胡でした。9歳の時には四川省広元市音楽コンクール少年部で少年二胡演奏優秀賞を受賞したのですが、その頃に使用していた2本目の二胡も、確か紅木材の楽器だったと記憶しています。その後、中学〜高校と練習していた楽器も同じく紅木材の二胡だったのですが、高校2年生から二胡の道を極めるべく向かった北京で、紫檀の楽器を手にするようになりました。2003年に中央音楽学院という難関を突破することができ、著名な二胡教育家である安如励、田再励の両師に師事することが叶いました。2年生の時からは、安老師に紹介していただいた老紅木二胡を暫く使用していたのですが、卒業して、北京での演奏活動の後に来日し、忙しい日々を送っているうちに気が付いたら7、8年が経過していました。そろそろ次の楽器を、と考えていた2年前に、この北京長安楽器“宋飛”シグネチャー アフリカ小葉紫檀二胡に出会ったんです。元々、蘇州二胡など南方の楽器は、柔らかく古風な音色が特徴ですが、私の音楽嗜好からすると柔らか過ぎる感じで、むしろ北京式二胡の方が弾きやすく音色も好みに合っていました。この二胡は、色々な製作家や工房の数ある中から選んだのですが、以前の老紅木二胡に比べると音色に透明感があって明るく、音質も硬過ぎず高音までよく出て、十分な音量も兼ね備えています。試し弾きをする時はいつも、高い音までしっかり音が出るか、ハーモニクスがきちんと出るかを確認するのですが、この楽器はその辺りもしっかりとクリアし、例えば、クラシック音楽のヴァイオリン曲、「ツィゴイネルワイゼン」などにも良く合っているんです。

老師:この「北京長安楽器」工房は北京市郊外にあり、高額な楽器だけでも月産50本ほどを製作しているということじゃったよ。本体にも彫刻されておるが、長安楽器で製作の指導者的な役割をしておる張鐘氏が監修、二胡製作師の張鈞氏が製作を手掛けておるぞ。この工房の楽器は、中国の有名な演奏家である王嘯、王穎、孫凰、宋飛をはじめ多数が使用しており、中国全土の音楽学院の学生や先生も多く使っておるとのことじゃった。段さんにその音色を聴かせてもらったが、確かに紫檀らしく明るく艶やかな音色の中にも芯があって高音部まで良く通り、北京式らしい十分な音量で鳴り響いておったぞ。段さんの素晴らしい技術も相俟って、この爺、危うく昇天するところじゃったぞぉ〜(感涙)。


(詳細は本誌をご覧ください)